東京, 2024年7月10日 - (JCN Newswire) - グローバル・コンサルティング・ファームのアリックスパートナーズ(本社:米国ニューヨーク、日本:東京都千代田区、代表:植地卓郎)は、今年で21回目となる世界の自動車業界の展望レポート「2024年版グローバル自動車業界見通し」(以下、本レポート)を発表いたしました。主なポイントは以下の通りです。
新車販売台数は、当面は中国が主要市場の伸びを牽引する一方、米国と欧州の勢いは鈍化。
世界全体でみるとOEM(自動車メーカー)が、サプライヤー(部品メーカー)を上回る収益の伸びを示しているが、中国域外では価格競争激化でOEMの利益は減速傾向。
新エネルギー自動車(NEV)は、プラグインハイブリッド(PHEV)と電気自動車(BEV)の需要急増により、2030年までに世界市場の半分近くを占め、内燃車(ICE)は40%以下に落ち込む見込み。
日本でのBEVの普及は、短期では軽EVのラインナップの拡充で微増に留まるも、2030年以降のインフラ整備の進展・技術革新で加速的にシェアが増加。HEVは価格・利便性で優位性を確保し2030年までに主要車両になると見込む。
自動車業界のビジネスモデル変革としては、開発プロセスや販売手法の革新と消費者テックの積極的な導入が挙げられ、いずれもコスト削減と市場投入までのスピードアップにつながる。
保護主義の台頭で、製造業の自国回避が加速化する。
今回の調査では、中国が世界の自動車業界にディスラプションを起こすと考えられることから、従来の自動車メーカーはパンデミック以降の売上も利益も健全水準を維持しているとはいえ、喫緊にビジネスモデルの変革に着手する必要があることが明らかになりました。いくつかの場面では変革の勢いが加速しており、OEMは車両のエンジニアリングからライフサイクルの中でいかに収益を確保するかなど、あらゆる側面で手法を率先して変えていく必要があります。
これまで欧米、日本、韓国が主導してきた自動車業界において、ここ数年は中国メーカーが業界基準を確立しつつあることは明らかです。2030年までに中国ブランドは世界中で圧倒的な力を持ち、中国域外での販売台数は900万台、世界シェアは33%に達する見込みです。中国メーカーのコスト面での優位性、自国外の市場でも販売を可能とするための現地生産戦略、デザインや新鮮さに対する消費者の移り変わる嗜好に対応した高度なテクノロジーを実装した自動車の製造がこの成長を実現する大きな要因となっています。
アリックスパートナーズの自動車・製造業プラクティスのグローバル共同責任者リーダーであるマーク・ウェイクフィールドは、次のように述べています。
「世界の自動車産業は、1970年代の日本の生産技術からはじまり、韓国勢の台頭、テスラによるディスラプションなど、過去半世紀の間にいくつかの重要局面を経てきました。中国ブランドは業界の新たなディスラプターであり、先進技術とデザインを備えた消費者のニーズを満たす車両を、効率的な製造を通じて、より迅速かつ安価に市場投入できます。従来のOEMが強力な中国ブランドに追いつくためには、軌道修正以上のことが求められます。自動車産業が向こう5~6年の間に直面するであろう変化の規模を過小評価すべきでありません。本レポートでは、2030年までにNEVは、世界の自動車販売台数の半分近くを占めると予測しています。中国ブランドは、世界市場の3分の1を占めるようになり、現在、世界的に利益率ではOEMを下回るサプライヤーも、価格競争、高度な電気やソフトウェアの機能に対する需要が拡大する中で、その影響力を増してくると見込まれます。また、自動車の基礎をなす構成要素も変化し、業界に大きな影響を及ぼすことも予測されます。現在の世界の自動車市場は、主に旧世代の自動車で構成されており、ハードウェア指向のエンジニアリングで設計されているため、車輪の付いたスマートフォンのように簡単にアップデートする操作はできません。しかしながら、2032年までに、米国では販売台数の24%がはるかに洗練されたSDVになり、最終的には1台当たり年間約650ドルの収益につながり、収益源の相当分を占めることが見込まれます。」
アリックスパートナーズの自動車・製造業プラクティスのグローバル共同リーダーであるアンドリュー・ベルグバウムは次のように述べています。
「現状維持の方針で問題ないと考えるOEMが存在するとしたら、目覚めることを拒んでいるどころか、退廃への道を歩んでいると言えます。世界の自動車業界で起きている変革は、かつては考えられなかったような驚くべき成熟を遂げている中国ブランドが牽引しているのです。中国ブランドは、デザインや内装技術など、顧客が実際に体験できる機能を大いに重視しています。また、海外に工場を建設した場合でもコスト優位性を維持することに冷酷なまでに注力し、バッテリー生産を含む新興のNEV技術において大きくリードしています。こうしたことが、中国メーカーを優勢な立場にし、やがて世界市場を席捲することになるでしょう。」
中国が世界の自動車業界の主役に
中国のビジネスモデルについて今回の調査分析で明らかになったポイントは以下となります。
サプライヤー対OEMの利益バランスが逆転:世界的にみると、サプライヤーの営業利益率は平均10.6%で、OEMに2%ポイント出遅れている。OEMが目先の市場シェア拡大に注力する中国では、サプライヤーの利益率が10.4%で、OEMを3.3%ポイント上回っている。
開発スピードが加速、スピーディーに新製品を市場投入:中国のEVメーカーは、車両開発における従来のやり方を刷新し、新製品を従来の半分の期間(40ヶ月対20ヶ月)で開発している。また、非中国ブランドと比較すると、中国ブランドの新製品の市場投入は2~3年早く、その平均はわずか1.6年。
中国製であることの利点:中国ブランドは35%のコスト優位性があり、それにより、欧州やその他の地域においての関税措置を相殺すべく価格を引き下げることも可能となっている。この優位性は、低賃金、原材料から部品サプライヤー、最終組立、他の自動車メーカーへの販売に至るまでの高度な垂直統合によって確立されている。輸出をより加速させている要因は、海外輸送能力の迅速な増強であり、独自の輸送ルート確保の推進を後押ししている。
営業主導のコンバージョンの向上:中国メーカーの多くは、D2C(Direct-to-Consumer)の採用により透明性が高く、一貫性のある顧客体験を提供している。また、マーケティングと販売に複数のチャネルがあるため、消費者エンゲージメントが高まっている。
世界の新車販売予測は、以下となります。
欧州の販売台数は、2024年に2%増加し、2027年までは東欧が牽引し約1%の微増に留まる。
米国の販売台数は、2024年に3%増加し、PHEVへの関心の高まりが成長を後押しする。2030年には、ICE車の販売台数シェアが35%に留まり、NEV(BEVとPHEV)のシェアが41%に達する。
中国の販売台数は、2024年には4.7%増の2,670万台と比較的小幅成長に留まるが、2030年には3,200万台を超え、このうち70%は中国ブランドが占める。
日本の販売台数は、2024年は品質検査問題による出荷停止で昨対比1%減、長期的にも人口動態とともに減少の見込み。
PHEVを含むNEVの販売台数は、2024年に世界で32%急増する。NEVのシェアは2030年までに45%に達する。
アリックスパートナーズのパートナー&マネージングディレクターで自動車・製造業プラクティス日本チームリーダーである鈴木智之は次のように述べています。
「日本のOEMやサプライヤーは強烈な危機感を持ち、All Japanで立ち上がるタイミングで、横並び主義を止め、日本のOEM間で連携し世界で戦えるNEVを生み出すことが求められています。NEV市場の拡大や中国ブランドのシェアアップは現実になる可能性が高く、その時に日本の自動車産業がどう戦うべきかを考え、今から緊迫感を持って、新たなパートナーシップ、研究開発、構造改革を進め、将来に対する準備を進めるべきです。自動車は低コストというだけで消費者が購入するものではありません。ICEで培った安全性・技術力・体験価値をNEVに活かせることは多く、日本の強みといえます。特に自動車をネットワークで繋がったプラットフォームと捉え、サービス提供による収益性向上と差別化を図ることが中国ブランドとの競争に勝つ鍵になるとみています。」
その他の特筆すべき調査結果は以下となります。
自動車コストの35%を占める電池パックは、化学的な技術革新と原材料の価格引き下げにより、急速に安価になっている。
原材料コストは全体的に低下しているが、ICE車の方が価格的にはまだ優位となっている。BEVの原材料費は依然、ICE車より85%高い。
昨年、デトロイト・スリーがUAWと合意したことで、メキシコの労賃は格差が拡大し、自動化の一般的な投資回収期間が25%~50%短縮されるなどコストが上昇している。
【注】本プレスリリースは2024年6月27日、米国で発表された内容をもとに作成したものです。
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